この記事の要点
- 厚生労働省は、応募書類や面接で把握すると就職差別につながるおそれがある14事項(本籍・出生地、家族、住宅状況、宗教、支持政党、尊敬する人物、愛読書など)を示しています。
- 令和6年度にハローワークが把握した不適切な選考854件のうち、41.8%が「家族に関すること」でした。
- 夜勤やシフトの可否を確かめたいときは、家庭の事情ではなく業務の条件として聞きます。
- 質問と評価基準を事前に決める構造化面接は、最新のメタ分析で職務遂行の予測力が最も高い手法でした(Sackett ら 2022)。
- 2026年10月1日から、応募者など「求職者等」へのセクハラ防止措置も事業主の義務になります。
面接は、応募者の適性と能力を見きわめる場です。ところが実際には、場を和ませるつもりの雑談や、「念のため」の質問が、就職差別につながるおそれのある質問になってしまうことがあります。厚生労働省の「公正な採用選考」の考え方と、予測力の高い面接のつくり方を整理します。
01就職差別につながるおそれがある14事項
厚生労働省は、公正な採用選考の基本として「応募者に広く門戸を開くこと」「本人の適性・能力以外を採用基準にしないこと」を挙げ、次の14事項を応募書類や面接で把握しないよう求めています。これらに限られるわけではない、とされている点にも注意が必要です。
本人に責任のない事項
- 本籍・出生地
- 家族(職業・続柄・健康・学歴・収入など)
- 住宅状況(間取り・持ち家かなど)
- 生活環境・家庭環境など
本来自由であるべき事項
- 宗教
- 支持政党
- 人生観・生活信条など
- 尊敬する人物
- 思想
- 労働組合・学生運動など社会運動
- 購読新聞・雑誌・愛読書など
採用選考の方法
- 身元調査など(「現住所の略図」も含む)
- 適性・能力に関係ない事項を含む応募書類
- 合理的・客観的に必要のない採用選考時の健康診断
02不適切な選考の4割は「家族」の質問
令和6年度にハローワークが把握した不適切な採用選考854件の内訳は次のとおりです。
出典: 厚生労働省 公正採用選考特設サイト「採用選考時に配慮すべき事項」(令和6年度にハローワークが把握した854件)「家族」の質問は、悪気なく出やすいのが特徴です。面接官全員で、聞かないことをあらかじめ共有しておくのが確実です。
03つい聞きがちな質問と言い換え
知りたいのは多くの場合「その仕事の条件で働けるか」です。家庭の事情そのものではなく、業務の条件を示して、できるかどうかを聞く形にします。
| 避けたい質問 | 当たりうる事項 | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 「ご両親は何をされていますか」 | 家族 | 聞かない(職務に関係しない) |
| 「お子さんを預ける人はいますか」 | 家族・家庭環境 | 「この勤務表(夜勤は月○回)で勤務できますか」 |
| 「持ち家ですか」「ご実家はどちらですか」 | 住宅状況・本籍/出生地 | 「通勤の経路と時間に問題はありませんか」 |
| 「尊敬する人は誰ですか」「愛読書は」 | 思想・信条 | 「仕事で大事にしていることを、経験を交えて教えてください」 |
| 「支持している政党は」「信仰は」 | 支持政党・宗教 | 聞かない |
04採用選考時の健康診断
採用選考のときの健康診断(既往歴の確認や健康状態の告知書の提出を含む)は、応募者の適性・能力を判断するうえで合理的かつ客観的に必要な場合を除いて行わないよう求められています。必要な場合も、検査の内容と必要性を事前に説明したうえで行います。
これとは別に、常時使用する労働者を雇い入れるときの雇入れ時の健康診断は事業者の義務です(労働安全衛生規則43条)。こちらは採否を決めるためではなく、採用が決まった後の健康管理のためのものです。
05構造化面接のすすめ
厚生労働省も、職務遂行に必要な適性・能力を評価する観点から、あらかじめ質問項目や評価基準を決めておくことを求めています。人事心理学の研究でも、質問と評価基準を事前に決める「構造化面接」の予測力が高いことが繰り返し示されています。
同じ表で、1998年の Schmidt & Hunter の推定では構造化面接 .51、非構造化面接 .38、職務経験年数 .18 でした。Sackett らは、過去の研究が統計的な補正をやりすぎていたとして多くの手法の値を下方修正し、その結果、構造化面接が最上位になりました。補正の方法をめぐっては研究者の間で議論が続いており、職場や面接の設計によって効果の幅が大きいことにも注意が必要です。それでも、「経験年数だけで判断するより、事前に設計した面接で判断するほうがよい」という方向性は、どちらの推定でも変わりません。
06面接を構造化する手順
研究で使われる構造化の要素はさまざまですが、現場で始めやすい形にすると、たとえば次のようになります(当サイトによる整理です)。
- 求める能力を書き出す。 仕事内容から、入職後に必要な能力・行動を3〜5個に絞ります。
- 能力ごとに質問を決める。 「過去に○○だったとき、どう対応しましたか」のように、経験を具体的に聞く質問にします。
- 評価の基準を先に決める。 どんな答えなら何点か、目安を文章で用意します。
- 全員に同じ順番で聞く。 応募者ごとに質問を変えないことで、比べやすくなります。
- その場で記録し、面接官ごとに採点してから話し合う。 印象に引っぱられるのを防ぎます。
質問をあらかじめ決めておくことは、上の14事項のような不適切な質問を防ぐことにもつながります。
072026年10月からは応募者へのセクハラ防止も義務
改正男女雇用機会均等法により、2026年10月1日から、応募者や職場訪問の参加者など「求職者等」に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の義務になります。面接や見学の場も関わるため、面接官への周知や相談窓口の準備が必要です。詳しくは2026年10月からのハラスメント対策義務で解説しています。
出典
- 公正な採用選考の基本
- 公正採用選考特設サイト「採用選考時に配慮すべき事項」(令和6年度ハローワーク把握分を含む)
- 公正採用選考特設サイト Q&A「採用選考時に健康診断を実施してもよいのでしょうか」
- 労働安全衛生規則(第43条)
- Sackett, Zhang, Berry & Lievens. Revisiting meta-analytic estimates of validity in personnel selection. Journal of Applied Psychology, 107(11)
- Sackett, Zhang, Berry & Lievens. Revisiting the design of selection systems in light of new findings regarding the validity of widely used predictors. Industrial and Organizational Psychology, 16(3), Table 1
- Schmidt & Hunter. The validity and utility of selection methods in personnel psychology. Psychological Bulletin, 124(2)
- 企業において募集・採用に携わるすべての方へ 男女均等な採用選考ルール
この記事は法令・公的資料をもとにした一般的な解説です(2026年9月25日時点)。制度は改正されることがあります。個別の判断は、労働局・労働基準監督署・ハローワーク・社会保険労務士などにご確認ください。