この記事の要点
- 求人票・募集要項には、業務内容・契約期間・試用期間・就業場所・労働時間・賃金・社会保険・募集者名・受動喫煙防止措置などを書く義務があります(職業安定法5条の3、同法施行規則4条の2)。
- 2024年4月1日から「業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「有期契約の更新上限」が追加されました。
- 2022年10月1日から、虚偽・誤解を生じさせる表示の禁止と、求人情報を正確・最新に保つ義務があります。
- 固定残業代は「①それを除いた基本給 ②時間数と金額 ③超えた分は追加で払う旨」の3点すべてを書きます。
- 年齢制限は原則禁止(例外は法令で決まった場合のみ)。「男性歓迎」「女性向き」なども性別による排除に当たるとされています。
対象: 自社で求人票・募集要項・求人広告を出す事業所。紹介会社・ハローワークへの求人申込みにも同じ項目の明示が求められます。
求人票は「応募を集めるための広告」であると同時に、法律で書く内容が決まっている書類でもあります。書き漏れや、実態と違う書き方は、応募者とのトラブルや早期離職のもとになるだけでなく、行政の指導の対象にもなりえます。ここでは、職業安定法と厚生労働省のリーフレットをもとに、採用担当者が押さえておきたいルールを整理します。
01求人票に書く義務がある項目
労働者を募集するときは、次の労働条件を明示しなければなりません(職業安定法5条の3、同法施行規則4条の2第3項)。求人サイトやハローワークの求人票、自社サイトの募集要項のいずれにも当てはまります。
| 項目 | 書くこと | 補足 |
|---|---|---|
| 業務内容 | 雇入れ直後の業務と、変更の範囲 | 変更の範囲は2024年4月に追加 |
| 契約期間 | 期間の定めの有無、ある場合はその期間 | |
| 試用期間 | 有無と期間 | 試用中に条件が変わるなら両方 |
| 更新の基準 | 有期契約を更新する場合の基準と、通算期間・更新回数の上限 | 2024年4月に追加 |
| 就業場所 | 雇入れ直後の場所と、変更の範囲 | 変更の範囲は2024年4月に追加 |
| 労働時間 | 始業・終業時刻、時間外労働の有無、休憩、休日 | |
| 賃金 | 賃金の額(賞与などを除く) | 固定残業代は3点表示 |
| 保険 | 健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険の適用 | |
| 募集者 | 雇用しようとする者の氏名または名称 | |
| 派遣 | 派遣労働者として雇う旨 | 派遣の場合のみ |
| 受動喫煙防止措置 | 屋内禁煙、喫煙専用室の設置など | 2020年4月に追加 |
022024年4月の改正で増えたこと
2024年4月1日から、募集時(職業安定法施行規則)と契約締結時(労働基準法施行規則)の両方で、明示する事項が増えました。ポイントは「入社直後だけでなく、将来の見込みも書く」ことです。
- 業務の変更の範囲: 例「(雇入れ直後)一般事務(変更の範囲)○○事務」
- 就業場所の変更の範囲: 例「(雇入れ直後)本社(変更の範囲)○○支社」。法人内の別事業所への異動がありうるなら、その範囲を書きます。
- 更新上限: 有期契約で更新がありうる場合、「通算契約期間の上限○年」「更新回数の上限○回」など。
厚生労働省は、更新の判断基準を「諸般の事情を総合的に考慮」のような抽象的な書き方ではなく、「勤務成績、態度により判断する」「会社の経営状況により判断する」など具体的に書くことが望ましいとしています。
契約を結ぶときは、労働条件通知書でも明示
採用が決まって労働契約を結ぶときは、労働基準法15条にもとづき、あらためて労働条件を明示します。有期契約の途中で無期転換の申込権が発生する場合は、無期転換を申し込めることと転換後の条件も明示が必要です(労働基準法施行規則5条)。
03「的確表示」の義務(2022年10月〜)
2022年10月1日に施行された改正職業安定法(5条の4)で、求人情報について次の2つが定められました。
- 虚偽の表示、誤解を生じさせる表示をしない。 実際と違う企業名、正社員とうたって実際はパート、実際より高い賃金などは虚偽表示の例です。
- 情報を正確かつ最新に保つ。 募集を終えたら速やかに掲載を止める、内容を変えたら更新する、いつ時点の情報かを明らかにする、などが求められます。
厚生労働省のリーフレットでは、「誤解を生じさせる表示」の例として次のようなものが挙がっています。
- 営業中心の仕事を「事務職」と表示する
- 契約社員の募集を、正社員の募集のように見せる
- 業務委託(フリーランス)の募集と、雇用の募集を混同させる
- 一部の高給の人の給与を、全員の給与のように見せる
- グループ会社の実績を大きく書いて、求人企業と混同させる
虚偽の広告・虚偽の条件の提示による募集は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(職業安定法65条)。違反には指導・助言や改善命令がありえます。
04固定残業代と試用期間の書き方
固定残業代は「3点セット」で
名称を問わず、一定時間分の時間外労働などに対して定額で払う手当(固定残業代)がある場合は、次の3点をすべて書きます。
よくない例
【月給】32万円
よい例
【基本給】25万円(固定残業手当を除く額)
【固定残業手当】7万円(時間外労働の有無にかかわらず、15時間分の時間外手当として支給)
15時間を超える時間外労働分の割増賃金は追加で支給
試用期間中に条件が変わるなら、両方を書く
試用期間の有無と期間は明示事項です。試用期間中と本採用後で賃金などの条件が違う場合は、それぞれの条件を示さなければなりません(職業安定法施行規則4条の2第6項)。記載例は「月給25万円(ただし、試用期間中は月給20万円)」です。
05年齢・性別による制限の禁止
募集・採用で年齢制限を設けることは、パート・アルバイトを含めて原則として禁止されています(労働施策総合推進法9条)。「年齢不問」と書いても、書類選考や面接で年齢を理由に不採用にすれば違法です。例外は、定年年齢を上限に期間の定めのない契約で募集する場合、法令で特定の年齢の就業が制限されている業務、長期勤続によるキャリア形成のために若年者を募集する場合(職務経験不問・期間の定めのない契約などの条件つき)、60歳以上の人に限る場合、などに限られます(同法施行規則1条の3)。
性別についても、男女雇用機会均等法5条で募集・採用の差別が禁止されています。厚生労働省の指針では、「男性歓迎」「女性向きの職種」といった表示や、男女のいずれかを表す職種名を使うことは、一方を排除する例とされています。法令上の制限があるなど、例外に当たるのは限られた場合だけです。
06資格が必要な職種での注意
医療・介護・運輸・建設など、資格が必要な職種では「どの資格を求めるのか」を正確に書きます。たとえば看護師と准看護師は法律上別の資格で、准看護師は医師・歯科医師・看護師の指示を受けて業務を行います(保健師助産師看護師法5条・6条)。どちらを求めるのか、または両方可なのかを書き分け、資格によって賃金が違うならそれぞれの額を示すと、応募後の食い違いを防げます。
また、看護師でない人が「看護師」やこれに紛らわしい名称を使うことは禁止されています(同法42条の3)。無資格の職員を募集するときの職種名にも注意が必要です。
07明示のタイミングと記録
- 求人票・広告の段階で上の項目を書くのが原則です。スペースの都合などで一部を省く場合も、面接など求職者と最初に接触する時点までにすべて明示する必要があります。見学が最初の接触になるなら、見学の時点までに示します。
- 選考の途中で条件を変える場合は、変更内容を速やかに明示します(職業安定法5条の3第3項)。当初の明示と変更後を対照できる書面が望ましいとされています。
- 明示は書面の交付が原則です。求職者が希望すれば、メールなど出力できる方法でもかまいません。
- 明示した内容の記録は、募集が終わる日(または契約を結ぶ日)まで保存します。
求人票を出す前に、チェックリストで確認
このページの内容を12項目のチェックリストにまとめました。採用前チェックリストからそのまま使えます。
出典
- 職業安定法(第5条の3、第5条の4、第65条ほか)
- 職業安定法施行規則(第4条の2)
- 2024年4月から、労働者の募集や職業紹介事業者への求人の申込みの際、明示しなければならない労働条件が追加されます
- 令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます
- 求人企業の皆さま 労働者の募集ルールが変わります(2022年10月1日施行)
- 固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします
- 「受動喫煙防止」のための取組を明示してください
- その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?
- 企業において募集・採用に携わるすべての方へ 男女均等な採用選考ルール
- 労働基準法(第15条)・労働基準法施行規則(第5条)
この記事は法令・公的資料をもとにした一般的な解説です(2026年9月25日時点)。制度は改正されることがあります。個別の判断は、労働局・労働基準監督署・ハローワーク・社会保険労務士などにご確認ください。