この記事の要点
- 2023年度実績の常用就職1件あたりの平均手数料(全国)は、看護 63.9万円・介護 55.1万円・保育 64.6万円・医師 82.4万円(厚生労働省, 2025年9月公表)。
- 手数料率の実績(2024年度、紹介事業所ごとの単純平均)は、全職種 24.0%、看護 21.6%、介護 20.2%。
- 厚生労働省は、紹介事業所ごとの手数料率と6か月以内の離職率について「手数料率実績の高低で離職率に大きな差は見られなかった」としています。
- 2025年の調査で、病院の75.2%が有料職業紹介の料金を「経営上大きな負担で、高い」と回答。早期離職があった病院の多くは返戻金を受けていますが、返戻額は「手数料の25%未満」が最多でした。
- 2025年4月1日から、紹介事業者には職種別の手数料率実績の公開と、違約金規約の事前明示が義務づけられています。
数字はすべて厚生労働省の公表資料・調査から。調査ごとに平均と中央値、回答者(求人側か紹介事業者か)が違うため、年度や調査をまたいだ比較はしていません。
人材紹介(有料職業紹介)は、急な欠員を埋めるうえで頼りになる一方、「手数料が高い」「すぐ辞めてしまった」という悩みもよく聞かれます。厚生労働省は近年、手数料と離職状況のデータを公開するようになりました。公表データをもとに、相場と、手数料をどう考えればよいかを整理します。
01職種別の平均手数料(厚労省公表)
厚生労働省は2025年9月、2023年度実績の常用就職(無期、または4か月以上の有期雇用)1件あたりの平均手数料額を、医療・介護・保育の職種別に公表しました。
- 医師82.4万円
- 保育64.6万円
- 看護63.9万円
- 介護55.1万円
同じ資料では地域ブロック別の値も公表されています。看護は北陸 74.0万円、東海 72.3万円が高く、北関東・甲信 47.2万円、九州 50.8万円が低くなっています。ただし、ブロックは紹介事業所の所在地で分けたもので、求人を出した施設の所在地ではありません。
02手数料率は年収の2割前後
2025年4月から、紹介事業者は職種別の手数料率の実績を「人材サービス総合サイト」に掲載することになりました。厚生労働省がその掲載分(2024年度実績、2025年10月末時点)を集計した結果は次のとおりです。
| 取扱職種 | 平均手数料率 | 20.1〜30.0%の事業所の割合 | 6か月以内の平均離職率 |
|---|---|---|---|
| 全職種 | 24.0% | 42.5% | 7.9% |
| 看護 | 21.6% | 77.5% | 10.5% |
| 介護 | 20.2% | 71.8% | 15.3% |
| 保育 | 24.3% | 78.2% | 12.2% |
| 医師 | 22.0% | 48.8% | 3.0% |
| 一般事務・秘書・受付 | 24.1% | 65.1% | 4.4% |
| 営業 | 31.2% | 17.7% | 5.4% |
医療・介護・保育分野では、手数料率を「20%台」に設定する事業所が7〜8割を占めます。紹介事業者への別の調査(厚生労働省, 2025年7〜10月実施)でも、手数料率の中央値は看護師・准看護師 20%、介護職員 20%、保育士・保育教諭 25%でした。
03手数料の決まり方(上限制と届出制)
- 上限制手数料: 省令で最高額が決まっている方式。2019年10月以降は、支払われた賃金の11.0%(免税事業者は10.3%)が上限などと定められています。
- 届出制手数料: 紹介事業者が手数料表を届け出て、その表にもとづいて受け取る方式。「年収の○%」という料率はこちらに当たります。2024年度の民営職業紹介の手数料収入(約9,835億円)のうち、99.7%が届出制でした(当サイト計算)。
04手数料が高ければ定着する?
「高い手数料を払えば、良い人が来て長く働いてくれるのでは」と考えたくなりますが、公表データはそれを支持していません。厚生労働省は、紹介事業所ごとの手数料率と6か月以内の離職率をプロットした図(看護 n=319、介護 n=453、保育 n=99、医師 n=91)について、「手数料率実績の高低で離職率に大きな差は見られなかった」としています。
経路ごとの離職率の差は「経路の効果」とは限らない
2019年の厚生労働省の調査では、紹介経由で採用した看護師・准看護師の6か月以内の離職率は23.1%、紹介以外の経路では12.0%でした。ただし、この差には、採用される人の事情や、紹介を使う施設の状況の違いも含まれている可能性があり、紹介という経路そのものが離職を増やすとは言えません。
05早期離職と返戻金の実態
2025年の厚生労働省の調査(医療等分野における雇用仲介事業に関する調査研究)では、次のような結果が出ています。
75.2%
有料職業紹介の料金を「経営上大きな負担で、高い」と答えた病院
84.6%
6か月以内の離職を困りごとに挙げた病院のうち、返戻金があった割合
37.7%
病院の返戻額で最も多かった「手数料の25%未満」
53.5%
早期離職のあと、そのまま欠員になった病院
負担感は業種で大きく違い、同じ質問に「高い」と答えたのは介護 76.7%、薬局 68.2%に対し、情報通信業は27.5%、小売業は18.6%でした。また病院が紹介で困ったことの1位は「採用した人の早期退職(6か月以内)」42.8%、2位は「採用後にわかったミスマッチ」29.9%です。返戻金があっても、欠員と、もう一度採用する手間は残ります。
06規制の流れ(2021〜2026年)
「就職お祝い金」など、社会通念上相当な程度を超える金銭で求職を勧めることを禁止
全都道府県の労働局に「医療・介護・保育」求人者向け特別相談窓口を設置
紹介事業者の職種別手数料率実績の公開、違約金規約の事前明示を義務化。求人サイトなどによる求職者への金銭等の提供も原則禁止に
医療・介護の配置基準の特例を受ける要件の1つに「適正認定事業者の活用」が入った(業界団体の資料による。告示・通知の原文は未確認)
07紹介会社を比べるときに見る数字
厚生労働省の「人材サービス総合サイト」では、地域・職種・手数料率で紹介事業所を検索し、手数料率の順に並べ替えたり、過去の就職者数と6か月以内の離職者数を見たりできます。契約の前に、次の点を確認しておくと安心です。
- 職種別の手数料率の実績(人材サービス総合サイトに掲載)
- 6か月以内の離職者数(同上)
- 返戻金の条件(対象になる離職の時期、返戻の割合)
- 違約金規約の有無と内容(2025年4月から事前明示が義務)
- 医療・介護・保育分野の「適正認定事業者」かどうか
トラブルになったときは、各都道府県労働局の特別相談窓口に相談できます。
08採用経路を組み合わせる
令和7年雇用動向調査によると、2025年に医療・福祉の職場に入職した人の経路は、広告 22.1%、ハローワーク 20.0%、縁故 20.0%、学校 11.3%、民営職業紹介所 9.8%でした。紹介は経路の1つにすぎず、求人広告、ハローワーク、職員からの紹介、自社サイトなど、複数の経路を組み合わせている職場が多いと考えられます。
どの経路で採用しても、入職後の「思っていたのと違う」を減らすには、入職前に仕事の良い面も大変な面も正直に伝えることが基本です。職場を実際に見てもらう見学や、1日のお試し勤務は、そのための方法の1つです(体験で業務をしてもらう場合の注意点はこちら)。
出典
- 地域ブロック別の職種別平均手数料及び離職率について
- 職業紹介事業における職種別手数料、離職状況について(資料PDFを含む)
- 医療等分野における雇用仲介事業に関する調査研究事業 報告書
- 令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)
- 医療・介護分野における職業紹介事業に関するアンケート調査 集計結果(概要)
- 紹介手数料の最高額の改正について
- 雇用仲介事業者は新たなルールへの対応が必要です(令和7年4月施行)
- 「就職お祝い金」などの名目で求職者に金銭等を提供して求職の申し込みの勧奨を行うことを禁止しました
- 『「医療・介護・保育」求人者向け特別相談窓口』を設置しました
- 医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度
- 令和7年雇用動向調査結果の概況
この記事は法令・公的資料をもとにした一般的な解説です(2026年9月25日時点)。制度は改正されることがあります。個別の判断は、労働局・労働基準監督署・ハローワーク・社会保険労務士などにご確認ください。